『最終的な決定権は子供に委ねられるべきである』
本書は、『アドラー流』を掲げている通り、アドラー心理学に基づき、「いかに子供をやる気にさせるか」そのための親の心構えや姿勢について、客観的視点で解説されています。
幼児への英語教育の視点で読むと、ポイントは3つ
- 少しでもできたことを認めてあげる
- 好奇心を刺激して、学びの幅を広げる
- 子供の背中を少し押す
「バイリンガルになれば、海外で働ける可能性もあるし、将来の年収も高くなる。視野や交友も広がって人生が楽しくなる。」と、期待するのは親の勝手ですが、最終的にそうなるか決めるのは本人、そんな現実を突きつけられる、厳しい内容です。
英語学習に限らず、子育て全般に通じる親への指南書です。
この本のおすすめ度 ★★☆
この本をおすすめする人
- 子供へのバイリンガル教育が思い通りにすすんでいない人
- アドラー心理学目線での英語教育に興味がある人
アドラー心理学「課題の分離」と「共同の課題」
本書の解説の前にアドラー心理学について簡単に説明します。
アドラーは、フロイト、ユングに並ぶ著名な心理学者です。
アドラー心理学を解説した「嫌われる勇気(岸見一郎著)」がベストセラーとなりましたが、その考え方は『劇薬』と表される通り、本人の主体性が求められる大変厳しいものです。
この中で、今回の英語教育に関連する「課題の分離」と「共同の課題」について解説します。ここでいう「課題」とは、「英語の勉強をすること」と考えてください。
「課題の分離」
- その課題を解決しなくて困るのは誰か?
- その課題の当事者以外の者は過度に干渉すべきではない
「共同の課題」
- 他者の課題の一部を共有し、引き受ける意思表示をする
- ただし、課題の最終判断はあくまで当事者がすべきである
簡単に言えば、『勉強をしなくて困るのは子供。親は干渉しすぎず、勉強がはかどるような配慮と応援をするに限る』ということです。
かなり突き放した教育方針に感じますが、周りがたき付けても、結局、本人がやる気にならなければ身に付かない、ということです。
アドラー心理学については、このサイトでさらに分かりやすく解説されています。
【アドラー心理学】課題の分離をわかりやすく徹底解説 | あつくてゆるいぶろぐ
アドラー流英語教育「自発を促す!」
さて、本書では、先のようなアドラー心理学に基づいて、英語教育のポイントが分かりにくく解説されています。
せっかくなので、原文を尊重して引用します。
- 子供は親の後ろ姿から学ぶ。子供を英語好きにさせるには、まず自身が英語好きになる必要がある。
- できない沢山のことを教えるよりも、できた少しのことを認めてあげることが大切。
- 子供が一つの課題に自信を持てれば、好奇心を刺激して、ほかのことにも興味を持てるよう仕向けることは難しくない。
- 教育におけるもっとも大きな問題は、子供の限界ではなく、子供が自分に限界があると考えることによって引き起こされる。
心理学特有の言葉選びなのか、回りくどいところがあります。
ですが、さすがアドラー流。バイリンガル教育に取り組む親にも英語を好きになることを強要しており、改めてその教えの厳しさが垣間見えます。
本書の趣旨を総括すると、「いかに子供をやる気にさせるか」が肝心で、できたことを褒めたり、逆にできるのに恥ずかしがったり、ためらったりしている時には背中を押すなど、親はあくまでも子供を応援する姿勢を見せ続けることが大切だと書かれています。
この応援する姿勢、「勇気づけ」として解説されている箇所を引用すると、
潜在的に秘められている力が十分に発揮されない状況の時、励ましの言葉を通じて心理状況を改善して、潜在能力を引き出すこと
例によって分かりにくく解説されていますが、子供が一歩を踏み出すための親の後押しが有効に働くかどうかは、親子の信頼関係に左右されるとのこと。つまり、日頃コミュニケーションが大事ということです。
まとめ
本書では、アドラー心理学に基づく英語教育法が解説されており、親は子供の自発が促されるような関わり方することが大切だと解説されています。
子供のやる気スイッチがどこにあるのか、毎日一緒にいても分かりませんが、それぞれの子供に合った「勇気づけ」の方法を探すことがポイントだと思いました。
要点: 英語を学びたいと自発的に思わせる
- 少しでもできたことを認めてあげる
- 好奇心を刺激して、学びの幅を広げる
- 子供の背中を少し押す
学び:親の想いを乗せすぎない、一定の距離感は必要
バイリンガルになって欲しい、けれど、将来そのスキルを身に着けたいかどうか、最終的に決めるのは子供自身です。考えていませんでしたが、途中リタイアも当然起こり得ます。
親としては、バイリンガルになるためのステップを着々と整えつつも、想いを乗せすぎず、一定の距離感を保って、応援していくことが必要だと感じました。
子供のやる気スイッチ、Googleが探してくれないでしょうか。